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夢
ユングは、夢が無意識の深層や元型、個性化過程の歩みにはとても関連性の深いものだとして重要視しています。ユングによれば、夢は心の最も奥深く、秘密の部分に隠されている小さな扉であり、自我意識が存在するよりずっと前から心にあるものであるとしています。
幻視
ユングは自身の幻視体験を解釈するために多くの時間と労力を費やしました。ユングにとって幻視や夢が教えてくれた真実の世界はユングを支える土台でした。キリスト教の正典聖書にも夢や幻視体験は啓示体験として重要な教義として述べられていますし、信仰の生き生きとした体験をもつ敬虔な信徒の啓示体験も報告されています。
個性化
ユングは、自らの夢や幻像の中の体験を通して、自身のこころは「個性化過程」を歩んでいるという表現をしました。 この個性化とは、価値判断や感情的な絡まりというような「自分の思考からの離脱」を意味しています。自分自身の本来のいのち、また客観性に到達するためには、感情の投射を棄て去ることが大切で、あるがままの思考の流れにまかせることによって客観的認識に到達できるのだとユングは考えています。
個性化過程での葛藤・対立
ひとは、深層にある集合的無意識が救済されて、人格に統合されるに至る個性化過程を進むとき、自己の意識は耐え難いほどの葛藤や、味わったものにしか理解しえないような心理的な窮境を通過するそうです。
この個性化過程の段階を経て体験したことは、人間にとってほとんど言語に置き換えることが不可能だと感じるほどに表現困難であり、話す気にならないような性質を持っている類のものです。
欲求・衝動
ユングは、人の欲求の中で、意味を求める衝動こそが人間を動かす原動力であり、それを通じて自我意識や心の多面性が生まれてくると考えます。そしてその意味を求める衝動は、生まれた時からすでに人間の心の中に存在しているとしています。「ファウスト」を創作したゲーテもまた「求める(ドイツ語ではシュトレーベン)」という行為の本質を事実関係の逆転として作品の中に仕組んでいたのです。人間は何かを求め続ける限り、それ自体が自己目的となって浄化され、天使によって救いを約束されるとして描き出されました。
リビドー
ユングは、心的エネルギーをリビドーと呼んでいます。ユングが考えるリビドーは、心的な出来事の強さや、その心理的な価値を表したものです。それは、自らの決定力によって定まるもので、特定な心的作用として表現されるようです。心の性質や深さ、本能のエネルギーの源、すごい力に満ちた心的な要素を持つこのリビドーは、日常的に人のなかでは複雑で多様なものとして無意識の奥深くに抑圧されていることが多いようです。
普遍的なるもの
人間の心の深層にある元型は、神話素と繋がっているのだとユングは考えます。心の奥深くの中心点には、何百年の歴史の流れの中でほとんど変化しない真理があり、過去数千年にわたって同一であり、この先も数千年にわたって同一であるだろうと想像される基本的な心的諸事実が見いだされるといいます。
共時性(シンクロニシティー)
ユング心理学の特徴の一つに共時性というメカニズムがあります。共時性とは意味のある偶然の一致を指しています。それは時間・空間を超越した次元が存在し、そのような高い次元を通じて超常現象や不思議な偶然が起こるというものです。そして物理的な次元を越えた領域で起こる現象に、人間の無意識には感応する素質が潜在していて、心や思考がそれをキャッチし同時に反応すると考えられているのです。
錬金術との関連性
ユングは、錬金術が心理学に意味深い歴史的な基盤を与えるとともに、無意識という心の深層を探求する心理学もまた錬金術の秘密を解く鍵を提供したと述べています。錬金術師は自らの術の本質を、一方では分離と溶解に、他方では結合と凝固に見ながら、対立するもの同士を対決させたり一致させたりして作業を終局に到達させることを目的としています。