ユングで学ぶ心理学入門 > 無意識層の源泉

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元型

人間のプシケー(心)の深層で自律的に働く本能的な力のことをユングは「元型」と呼びました。この元型は人類に共通の普遍的無意識を構成する素です。私たちが本能というものを見ることができないように、元型的な力そのものもまた私たちは見ることはできません。深層に働いている元型は、時として夢や幻想、思考の中にイメージという形になって現れてきます。

老賢者(マナ人格)

グレートファザー、父なるものの元型。 超自然的な力を備えたマナ人格と呼ばれるもので、成長と活力の根源的なシンボルとして象徴されます。導師、預言者、聖職者、医者や魔術師、先生などのように権威ある人物として夢や幻像に現れます。

トリックスター

「いたずら者」や詐術師として活躍する元型。 このいたずら者はヒーローとして世界中の神話や民話に登場しています。ギリシャ神話のメルクリウス(ヘルメス)も典型の一つであり、策略を用いる賢さと知恵に対し欲望を抑えきれずに失敗してしまう愚かさや滑稽さに笑われる者として象徴されます。 

ペルソナ(仮面)

ユング心理学では、この仮面は外界に向かって表現される自分、本来の自分の姿ではないけど世界と関わるために定着するスタイルや役割を持つために選び取った仮面を意味しています。

シャドウ(影)

ユングはこの影を「自分がなりたくないと思うもの」「苦手なものや生き方」と定義しています。人間の原始的で本能的な側面であるシャドウは、自分の意識がふと油断した隙をみて、無意識の障壁を越えて善意ある自分の中に入り込んでくると言います。

神的な子ども

純真な幼児、神聖な子の元型です。夢の中においても赤ちゃんや幼児として登場し、純粋で傷つきやすく、汚れを知らない変容の力を持って現れます。また、真の自己、完全性のシンボルとして永遠の神聖さを象徴するものでもあるようです。

アニマ・アニムス

女性的な要素を意味する元型をアニマといい、魂、生命、ムード、感応、風など男性の集合的無意識の中に存在するものとされています。またこのアニマは、母、恋人、妻など身近な女性に投影されることが多いようで、この元型に無意識を占拠させてしまうと、男性は過度に感傷的になって情緒不安定に陥ってしまう危険性があるとも言われます。

グレート・マザー(地母神)

「母」の元型像です。グレートマザーは、個々人の幼少期の経験に端を発するだけでなく、成長と多産を慈しみ奨励する一方で、権勢をふるったり、むさぼりやそそのかし、支配するもの全てを象徴する元型でもあります。またエネルギーは神聖、優美、純潔のみならず、大地や農耕、豊穣をもたらすものとしても象徴されています。

フィレモン

ユングは想像を絶するほどに多くの幻想とイメージと夢を見ています。そして無意識の対決で現れたひとつの像と生涯をともに過ごしたそうです。聖書に登場するエリヤはユングの前に賢く年老いた予言者として現れました。そしてエリヤから発展した像がフィレモンです。ユングによればフィレモンは異教徒で、エジプトのヘレニズム的な雰囲気を持っていたようです。フィレモンはユングに属さない一つの力として空想に登場し、またユングと会話をしていたようです。

東洋の影響

ユングは易経や東洋哲学に関心を持っていました。キリスト教宣教師として中国へ渡ったリヒアルト・ヴィルヘルムという人物にユングは出会い、易経や中国哲学、宗教について多くを語り合ったそうです。中国の思想や哲学的伝統の中に、ユングは無意識と共通する概念や事柄を見いだしたのです。

曼荼羅

曼荼羅はサンスクリット語では「円」を意味します。この幾何学模様から成るチベット密教の曼荼羅図に、ユングは心理学的な意味を見いだしました。ふだん意識されない自己は、何かの要因で突如心理的危機に襲われたようなときに動き出し、曼荼羅模様のようなイメージとして意識に浮上してくることがあることを発見しました。




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