欲求・衝動

ユングは、人の欲求の中で、意味を求める衝動こそが人間を動かす原動力であり、それを通じて自我意識や心の多面性が生まれてくると考えます。そしてその意味を求める衝動は、生まれた時からすでに人間の心の中に存在しているとしています。「ファウスト」を創作したゲーテもまた「求める(ドイツ語ではシュトレーベン)」という行為の本質を事実関係の逆転として作品の中に仕組んでいたのです。人間は何かを求め続ける限り、それ自体が自己目的となって浄化され、天使によって救いを約束されるとして描き出されました。

ユングのそれもゲーテ同様、同一の言葉の持つ意味の本質から描かれているのです。この意味を求める衝動こそが、ドイツ語の「Streben」であり、「求める」対象を特定しない渇望として意味を持つものでした。本能に限定しない広い意味での欲求や衝動の原理を認識することが必要だとユングは考えたのです。




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